2024年7月21日

アメリカ人の友達は?

バッファローで子ども同士が遊ぶためには、ほぼ必ず親が車を出す必要がある。
そんな障壁があっても、学校はもちろんとして、誕生日会に呼ばれたり、学校の音楽の授業に付随するコンサートやオーディションで一緒だったり、私の大学で行われる数学のコース(Gifted Math Program. 以下では GMP と呼ぶ)だったり、単に誰かの家なり外のカフェなりに集まろう(これも、親が車を出す)となったりで、友達はできていく。

そうやって親しくなっていく友達は、どうやら全員外国人だ。アメリカ人の友達がいない。3人の娘の全員についてである(アメリカ人とのハーフが少なくとも1人いるので、「外国人」という言い方は乱暴であることを認める)。
具体的には中国人とインド人が圧倒的に多い。次女には中国人の友達がとても多く、長女にはインド人の友達が多い。ただし、それは、それぞれの学年に中国人とインド人のどちらが多いかという偶然に依存するだけだ。
なお、親がアメリカに帰化していたり、アメリカで出生していたりで実際の国籍はアメリカ人かもしれないので、親の出身国で基本的に判断している。
でも、これにも例外がある。両親が中国系アメリカ人という人がいる。その家の会話は英語である(両親とも英語が母語なので)。実際の国籍については知らない。
このように、ここでの「外国人」の定義は「外国人関係」という曖昧なものである。

最初は、うちの子に上記の意味での「アメリカ人」の友達がいないのは、同じ見た目の人同士がかたまりやすいせいだと思っていた。
私の研究分野(ネットワーク科学)に関係する社会学の古典的研究に、白人は白人同士で、黒人は黒人同士でかたまって住みやすいというのがある。研究など持ち出さずとも、容易に想像はつくかと思う。
学会では、色々な国から参加者が来て交流している。ただ、自国人でかたまりやすいことを別にしても、ヨーロッパ人はヨーロッパ人と、東アジア人は東アジア人とつるむ傾向が多い気がする。それと同じことだ。
ところが、この推測は論理的でない。インド人と日本人は、とくに見た目が似ていないからだ。

面白いことに気づいた。長女の仲良しグループ(10人くらいの範囲)にはロシア人とウクライナ人の子も1人ずついるのである。特にロシア人の子と長女はかなり仲が良い。(ウクライナ人の子は、比較的最近転校してきたようである。)この2人は白人だ。 子どもが行っている学校は大雑把に行ってアメリカ人が7〜8割くらいで、アメリカ人の中では、多分8割くらいが白人だ。ロシア人とウクライナ人の子は、見た目としてはアメリカ人の白人と(細かい違いはあるとしても)大して見分けがつかない。

ロシア人とウクライナ人の子も仲良しグループにいるということは、見た目で友達が分かれてはいないことを示唆する。 ではなぜ分かれるのか?
外国人といっても、ずっと英語で生活している。アメリカで生まれ育った人も多い。英語は、彼女たちの会話を聞いている限り、アメリカ人の英語と差がない。

子どもに問うと、明確な答が返ってきた。

「話が合うか合わないか、で決まる。」

出自は関係ない。

私の長女は真面目ちゃんだ。学校の成績と、フルート、ピアノ、あとはコナンが彼女の関心事だ。
車の送迎を友達間で融通しあうことが多々ある。したがって、長女が車の後部座席で友達と話している会話は、運転席の私に聞こえてくる。その内容は、学校の成績、テスト、先生、GMP、などが多い。盗み聞きしてもつまらない。

私の次女は真面目ちゃんでない。父親が勉強について言うことにはまず反発するし、他にも色々ある。 ところが、そんな次女も、彼女の学年の中国人グループというか、外国人のできる子集団に入っていたいのである。
GMP には入学試験が一応ある。それに合格するためには準備が必要なので、試験の半年前に聞いたところ「算数は好きでないから受けない」と言った。次女がそう決めるならそれでよいと思っていた。
なのに、その試験が終わって3ヶ月くらい経って、「やっぱやりたい」と言う。
ぶちきれそうになるが、怒りを抑えて先方に問い合わせをしたところ、たまたままだ席があるから後から試験を受けてよいことになる。突貫工事で準備して、後日の試験で何とか(!?)滑りこんだ。
そんな次女が、GMP に入りたかった理由は明らかで、他の友達が行くからである。

そんな次女も、友達のでき方について長女と同じことを言う。
特に、(もちろん人にはよるだろうが)「アメリカ人はダンスの youtube 見てたり、タレントの話に花を咲かせていたりで、興味ない」とのたまわった。
これには驚いた。なるほど、そうやって友達集団が分かれていくのか。日本と何ら変わらない。人種ではない。
また、外国人の子女がみんな同じ感じなわけではない。習い事をさせるかどうかは主に親に依るし、GMP だって親のやる気がなかったら始まらない(情報をとってきたり、行くことになったら週に2回の大学までの送迎が発生したりする。お金も多少はかかる)。こういった親の行動は、良し悪しは関係無しに、子どもの育っていく方向性にとても影響する。

仲の良い(アジアルーツとかではない)「アメリカ人」の友達もできると多様性の観点からはより良いな、とちょっぴり思う。 しかし、価値観が合う友達、自分より勉強ができたり、何らかの志や能力が高いような友達がびしばし周りにいる環境はありがたい。 イギリスのときには、長女には生粋のイギリス人の仲が良い友達がいた。(次女や三女はまだ、安定した友達を作っていく以前の年齢だった。)「アメリカ人」の友達もいずれはできるだろう。