2018年9月11日

大連:日常編

中国の大連に3週間行った。

大連の人口は(どこまで大連に含めるかには依るが)650万。
ロンドン(900万弱)とさほど変わらない。
なお、ロンドンは、ヨーロッパ(色々な数え方があるが、トルコとロシアは考えないとする)でダントツに人口が多い。人口でロンドンに次ぐ都市は、300万規模が 3, 4 ある程度である。

中国人と話すと、「あの都市は小さい」と言う。
彼らの「小さい」の定義は、例えば100万人や200万人だ。なので、この定義にしたがうと、ヨーロッパでは、ロンドン以外は多分全部「小さい」市となる。パリもローマもアムステルダムも小さいのである。日本でも、東京圏と関西圏を1つずつだと数えて、これらは小さくはないとして、ただ、札幌、名古屋、福岡をはじめとする他の全部の都市は「小さい」とされるだろう。
確かに「中国で100万人以上の人口を持つ市」というリストを見ると、私は聞いたこともない名前の市がほとんどで、そういう市が100個以上ある。

大連は650万都市なので、小さいとはされない。ただ、大連より人口が多い市は中国に10以上あるので、大連は特筆すべきほど大きい都市ではない。

大連は地方都市である。北に属するので、南の方にある洗練された都市(大連で私を世話してくれた共同研究者は、上海に近い浙江省の出身で、洗練された地方の一つであるらしい)からすると粗っぽい感じだそうだ。実際、街中の食堂とかでも、自分の都合を押し付けてきたり、英語の通用率が低かったり、ということは感じる(ただし、私が中国の他の都市と比較していないので、客観的ではないです)。

大連は他の中国の都市に漏れず、近代的な都市である。「人口が500万を超える地方都市」という時点で、日本やヨーロッパにはすでに存在しない概念だ。しかも、それが近代的なのである。

とにかく高層ビルの数がすごい。30階建て以上のビルは、市内に100以上ある。「数えたい」と言ったら共同研究者に笑われた。私の居た大連理工大学は市の郊外にあるが、そこから見えるだけでも、30階超えであろうビルが10や20ある。大学から中心部を臨むことはできないので、大学の周りだけで、である。
市の中心部に行くと、大手町や新宿よろしく高層ビルだらけである。誰か数えてくれ。

建設ラッシュ。
どこもかしこも建設ラッシュだ。
私の住むイギリス・ブリストルでも、建設現場は多く見る。しかし、建設ラッシュだから建設現場が多いのではなくて、建設が遅いから建設現場がずっとあるのだ。
理由が異なる。
中国では、建設はかなり速いとのこと。
私の共同研究者は大連に十年住んでいる。
今ある大きな建物の大半が十年前にはなかった、と言う。

高層ビルや建設ラッシュは、大連特有のことではない。そして、他の中国の都市と同様、交通渋滞は大連においても問題である。急速な近代化や車の保持率の上昇に、交通インフラの整備が追いついていない様子。地下鉄は急ピッチで延伸されている。バス網は充実していて効率も良いが、渋滞していないとしても、ちょっと時間がかかりすぎる。

大連が暮らしやすい、と思ったことを4つ挙げる。

(1) バスが安い。私が使ったバスは1元で大連理工大学から市の中心部(6〜8km 離れている)まで運んでくれる。2元のバスも大学から出ている。1元は16円。だからどのみち安い。
そして、バスが十分に近代的で驚いた。特別なことはないのだが、中に電光表示があって、現在のバス停や次のバス停が表示される(しかも、漢字なので分かる)。
乗り降りも、大抵の人が電子マネーで運賃を払うので速い。
しかも、マナーが何だか良い。
たまたま自分の足が他の座席にはみ出していたら、普通のおじさんに注意された。これにはびっくりした。なぜなら、注意してくるくらいなら、その人も多分はみ出さないように気をつけているからである(本当かな?)。
他の乗客を見ていても、日本の様子と何ら変わらない。
バス運賃は先払いだった。すぐに財布が出てこなかったり、自分の電子マネーにトラブルがあった客が、後ろに並んでいた客をとりあえず先に乗らせて、自分は横で処理する。日本と同じではないか。

なんでこんな当たり前のことを言うの? と皆さんは思うかもしれない。
イギリスでは当たり前でないからである。
電子マネーや、この場合に後ろの客を先に行かせるという種類の配慮は、イギリス、少なくともブリストルにはあまりない(それでも、バス用電子マネーは、ここ1, 2 年で増えた)。
イギリス人が他人への配慮に欠けると言いたいのではない。この種類の譲り方が、全体の効率を大事にしているように見えて、日本と似ているように感じたのだ。
ともあれ、電子マネーやこの種類の譲り方が少ないイギリスのバスでは、バス停で客が乗り終わるのにとても時間がかかりやすいのは本当だ。

マナーについては、バスや大学内だけでなく、ショッピングモールなどでも、列に割り込んだりとかをほとんど見なかった。
3週間滞在してマナーのストレスを感じなかったのは、正直、ポジティブな驚きだった。

(2) ご飯が安い。大学内では、100円で朝食、300円で昼食を食べられる。大学から食堂に対して補助が出ている。ただし、外の食堂に出ても200円や300円で十分に食べられる。しかもおいしい。また、カラフルなミルクティーやフルーツティーもおいしく、200円程度で飲める。近代的なショッピングモールに行くと、大学界隈よりは高いけれども、まあ安い。
地元の若者や家族連れが普通にそういう外食をしていて、彼らは、特に金持ちというわけではない。
ただし、マックやスタバは高い。
日本やイギリスと同じような値段である。
安いのは地元系の店である。
地元の商店に入ると、地元っぽい菓子パンと、日本だったらコンビニにありそうなきれいめな菓子パンが、隣に並んでいる。
ところが、実は値段が倍以上違ったりする。
飲み物もそういうことがある。
味はそこまで変わらないけれども。

(3) 大きなショッピングモールや近代的な店並び。
たくさんある。便利だし、東京出身の自分としては、正直なごむ。地下駐車場併設。上層階はレストラン。間の階にブランドショップ等。ユニクロ、無印良品も見かける。日本と何ら変わらない。

(4) 大気汚染が少ない。半島の先端にあることで得しているらしい。中国の多くの都市は大気汚染が結構きついというので、空気の良さは大連の強みだ。実際、滞在中に大気が気になったことはなかった。
それでも、大気汚染を心配する中国人は、ごついマスクをつけている。ただし、そういう人の割合は、北京や上海と比べてとても少ない。

大連なのか、中国全体なのか、中国初心者の私にはよく分からないが、暮らしにくいと思ったことを4つ。

(5)トイレ。
どれくらいよくあることなのか分からないが、私が経験した限りでは、大抵和式(中国式というのが正確だろうが、和式とほぼ同じ)である。
私が滞在した大学の建物は、今年新築された。それなのに、トイレは全て和式だ。中国の大学はおしなべて金持ちなので、洋式のトイレを作る予算はありそうだ。理解に苦しむ。
どうでもいいけど、和式って、自分がした「う☓☓」の量が、洋式よりもよく分かるんですね。
毎日使ってて気づいた。
なお、私が滞在した大学の宿舎は、洋式トイレだった。

大学のトイレには紙がない。自分でトイレット・ペーパーを持ち歩くのが結構普通とのこと。さらには、石鹸がない。毎回石鹸とトイレット・ペーパーを持ってトイレに行くのは、ちょっときつい。
3週間いると慣れるけど、それでも。

なお、町中に公衆トイレはあるが、汚いことが多い。
ただ、イギリスもトイレがかなりイマイチの国なので、驚かない。
むしろ、公衆トイレがそれなりの頻度で配置されていて無料で使えるだけ ok。

(6) 受動喫煙。
喫煙マナーは良いとは言えない。大連の空港に到着してトイレに行くと、非常に煙る。大学の中でも、オフィスで喫煙している教員が結構いて、廊下に臭いが出てきている。宿舎の廊下もなんとなく臭う。
日本も、自分が子ども〜大学入学頃までは、まあそうだったように思う。
今では、日本人の喫煙マナーは概して素晴らしく、大学も禁煙キャンパスだったりする。
中国もそうなってくるのだろうか。

(7) 歩道がいまいちなことが多い。建設ラッシュが追いつかないのか何なのか、歩道が途中で切れていたりする。地元の人は、信号がなくて車がびゅんびゅん走っている道をどんどん渡る。私は怖くて、道を渡るのはちょっとしたストレスだった。もし子連れだったら、もっとストレスを感じそう。
ただし、街の中心部や水際の観光地域は、歩道が広くて平らで、歩いてて快適。

(8) 有名なこととして、中国はグーグルなどが入らない。VPN(というものがある)を買ったりして使うのが一般的なようだ。VPN を使っても、ネットがうまくつながらないことが結構あった。それが自分がいた場所の問題なのか、中国でよくある問題なのかは分からないけれど、そこは不便だった。