2013年8月13日

ネット銀行というファッション

5年前、私はある理不尽に我慢ならなくなった。

振込である。

家賃、学会参加費など、振込はよく行う。当時、振込の度に ATM に並ばなければならなかった。職場の学食脇に 3, 4台の ATM があり、常に長蛇の列を従えていた。5年経った今もそうだ。しかも、自分の銀行の ATM の列だけ長かったりする。時間の無駄!

そして、振込には手数料とやらがかかる。振込先の銀行が自分の銀行と異なると、500円もとられる。500円玉を持って隣にある学食に入れば定食にありつける。この理不尽!

そこで、即座にネット銀行に移行した。極端にも、それまでに持っていた3つの口座(1つは郵貯)を全て閉じ、3つのネット銀行(1つは新生銀行なので、ネット銀行と店舗型銀行の中間型と言えよう)に乗り換えた。3つ口座を開いたのは、それぞれ長所と短所があるからだ。例えば、(少なくとも当時は)仕事で外から振込を受けるとき、「ネット銀行には振込めません」と言われることがたまにあった。新生銀行にしておくと、自分の経験上必ず大丈夫である。一方、新生銀行は両替(為替)手数料が高めなので、外貨も持ちたい私は為替手数料が安いソニー銀行にも口座を作った。

その結果、、、すごくいい。

まず、振込はネット上でできる。楽だ。

振込手数料は、それなりの貯金額があれば月数回まで無料である銀行が多い。この無料回数が足りなくなることはまずない。「それなりの貯金額」とは、社会人にとっては敷居が低い自然な額である。

振り込み以外のネット銀行の長所を3つ挙げる。

  • お金を引出しやすい。ネット銀行は店舗や ATM を持たないので、他の銀行、郵便局、コンビニなどの ATM を使うことになる。ATM 使用手数料が気になるところだが、社会人にとっては少額と言える貯金額さえあれば、月数回の引出しまで無料であることが普通だ。自分の場合、セブン-イレブンで引出す。私が3つ開いた口座のどれかでは、多分他のコンビニからも無料でお金を引出せる(必要に駆られてないので調べてない)。今どき、コンビニは、銀行が設置する ATM コーナーよりも多いので便利だ。この5年間、銀行の ATM に一度も並んだことがない(コンビニの ATM に列ができることは稀)。街中や大学内の ATM で長蛇の列を見る度に勝ち誇った気分になる。ふふ。
  • 紙の通帳がない。ネットで入出金履歴を見る。これが長所か短所かは価値観による。私にとっては長所である。通帳というものは、大抵見た目がださい。紛失・盗難リスクもある。しかも、当時の郵貯に至っては、定期的に記帳しに行かないと、過去の入出金履歴が分からなくなってしまうのであった。いつだか、記帳をさぼったために「◯◯以下20件で、合計△△円」と通帳で1項目にまとめられてしまったことがある。たかが記帳のために郵便局に行けというのか。。。
  • 預金の金利が高い。今はどのみちゼロ金利なので差を実感しにくいが、ゼロ金利でない時期には、ネット銀行の金利は店舗型銀行の金利よりかなり高いことが多い。

このように便利なネット銀行だが、その割には普及してないと感じる。私の友人たちによると、ネット銀行を使わない主な理由は2つあるようだ。

  1. ネットでお金をいじるのが、セキュリティや操作誤りなどの意味で心配だ。

    これは確かに人それぞれだろう。ネット上のカード決済をしたくない人も、同様の気持ちなのかもしれない。私は、特に気にならないので、ネット銀行によってハッピーになった。

  2. 大手銀行は、安心感がある。

    これは是非再考を促したい。まず、ネット銀行にも預金保険がついているので、店舗型銀行と同様、万が一つぶれても1000万円までの預金額が戻ってくる。

    「安心感」がサポートなどの充実を指すのならば、その分のコストを客側が払っていると指摘したい。大手銀行の店舗に足を踏み入れると、我々は至極丁寧に扱われる。入ってきた客に挨拶をすることが主業務であるかのように見える行員、手とり足取り教えてくれる行員、あるいは老人のよくわからない相談ともいえぬ相談に一対一で長時間応対している行員。しかも、これらの人はバイトではないように見える(実際はどうなんだろう?)。これらのサービスには人件費がかかっている。人件費は、預金の金利が低い、振込手数料が高いなどの形で客が背負っている、とどうしても考えてしまう。客観的な統計は知らないけど。そもそも、店舗を構えていることがコストである。

    年配の方のほとんどは、店舗型銀行を選んでいるだろう。ネット銀行の存在すら知らないかもしれない。そして、カスタマーサポートのリソースは、ネット銀行の存在を知らないような客の方に多く使われる。なぜなら、ネット銀行の存在くらいは知っている人(もちろん、若い人が多い)の方が飲み込みが速いし、客観的な事実というもの(例えば、投資を行ったら元本割れする危険があることなど)に慣れているだろう。元本割れしても銀行に怒鳴りこみに行くようなことはしないだろう。そして、客がどんな理不尽、意味不明な案件を持ちかけてきたとしても、店側は客をぞんざいにはできない。至極丁寧に扱わなければならない。ノーと言いにくい日本国である。似たことは、病院などでも日常的に起こっている。そうだとすると、このブログの読者であるような皆さんは、多分、カスタマーサポートの類を平均以下しか利用していない(あまり利用しなくて済む)。つまり、皆さんの預金は、懇切丁寧なサポートを善しとする他の顧客のサポートに使われている可能性が大きい。私は、それを我慢できない。

最後の点に熱が入ってしまった。

着る服、聴く音楽、あるいは所有するクレジットカードの種類がファッションの一種なら、使う銀行もファッションの一種だ。それなりの都市部に住んでいれば、「◯☓銀行しか近隣にないので他に選択肢がない」という制限は今となってはあまりないだろう。この機に、自分の銀行ファッションについて考えてみるのはいかがだろうか。

銀行間の激しい競争のせいだろうか、ネット銀行はここまで良いサービスをこんなに安く提供してくれるのか、とさえ思う。実際、振込手数料も ATM 手数料もただで、そのために必要な貯金額はせいぜい数十万円という銀行も多い。チャンス!