サッカー漫画ブルーロックの二次選考では、次のルールで選手選考が行われる。次の問に答えよ。
ネタバレのようだが、ウィキペディアにも二次選考のルールは細かく書いてあるので、書いてしまって良いと見なします。
- まず、選手3人で自由にチームを組む。
- 3人のチーム同士がお互いの合意のもとで試合を行い、勝ったチームが負けたチームから一番欲しい1人の選手を引き抜く。勝って4人になったチームは "4th"(「第4」と書く)ステージに行く。負けて2人になったチームは第2ステージに行く。
- 第4ステージには4人のチームだけがいるので、お互いの合意のもとで2つのチームが試合を行う。
- 勝ったチームは負けたチームから1人の選手を引き抜くので5人となり、5人で勝ち抜けになり、三次選考に進む。
- 負けたチームは1人の選手を失うので3人になり、第3ステージに戻る。
- 第2ステージには2人のチームだけがいるので、お互いの合意のもとで2つのチームが試合を行う。
勝ったチームは負けたチームから1人の選手を引き抜くので3人となり、第3ステージに戻る。
負けたチームは1人の選手を失うので残り1人だけになり、その時点で敗退となる。 - 第3ステージに戻された3人のチームも、お互いの合意のもとで試合を行い、勝ったチームが負けたチームから1人を引き抜く。
- 全員が三次選考に進むか敗退するまで、繰り返しゲームを行う。
これがルールである。
問題:二次選考に進んだ選手が120人だとする。三次選考に進む選手は何人か?
解答:まず、チームの平均人数はマルチンゲールである。
マルチンゲールとは、数学の確率論という分野で学ぶものである。学部レベルよりは大学院レベルだと思う。
120人が最初に3人チームに分かれるので、チームは40個ある。
そして、二次選考開始時点では、チームの平均人数は3人である。どのチームも3人なのだから、平均ももちろん3人、ということだ。
次に、上のように試合を色々やっても、「チームが40個ある」という事実は変化しない。1人だけのチームになって敗退が決まったチームや、5人のチームになって勝ち抜けが決まったチームも含めれば、チームは最初から最後まで40個あるということだ。もちろん、各チームの人数は変化していく。
マルチンゲールとは、大雑把に言うと、何かイベントが起こったときに、そこでの平均値は変化しないことを指す。
例えば、3人のチーム同士が対戦すると、試合後に、片方のチームは4人となり、もう片方のチームは2人となる。(4+2)/2=3 なので、平均は試合前と同じ3人のままである。
また、4人のチーム同士が対戦すると、試合後に、片方のチームは5人となり、もう片方のチームは3人となる。(5+3)/2=4 なので、平均は試合前と同じ4人のままである。ここで言う平均とは、「そこでの平均」つまり、この2チームの平均、という意味である。
この意味での平均はどんな試合をしても変化しないので、「チームの平均人数はマルチンゲールに従う」と言う。
次に、基本的には、最終的にチームの人数は5人か1人になる。5人になるチームの数を X と書くと、1人になるチームの数は 40-X である。なぜなら、上で述べたように、チームが40個ある、ということは変化しないからである。
そして、マルチンゲールの大切な数学的性質として「全チームの」平均人数は3のままとなる。なので、
5 * X + 1 * (40-X) = 3 * 40 = 120
となる。* は「かけ算」の意味である。これより X = 20 と分かる。
つまりは、最後にはどのチームも5人か1人になる。チームは40個あり、選手は全部で120人いる。これらの拘束条件を全部満たすのは X = 20 だけなのだ。20個のチームが5人となって勝ち抜けになり、20個のチームが1人となって敗退すると分かった。
したがって、問題の答(三次選考に進む人数)は、100人である。
120人中100人が通過する。意外と多くの選手が通過することが分かる。
実は、もう1つ答がある。
上の答の出し方では、何が欠けているのだろうか。
それは、最終的にどのチームも5人か1人になる、と決めつけてしまったことである。確かにそうなることが自然だが、最後にきれいにそうなるとは限らない。
もし2人チームがまだ2つ以上あれば、お互い合意して試合を行う。(負けるリスクがあっても、そうしないと選手は先に進めない。)
なので、最後の最後で2人チームが2つ以上残ることはない。
しかし、最後の最後で2人チームが1つだけポツンと残ることはあるかもしれない。
同様に、最後の最後で3人チームが1つだけ残ったり、4人チームが1つだけ残ることはあるかもしれない。
すると、もし全部のチームが最終的に5人か1人にならないとしたら、考えられる可能性は
- 2人チームが1つ、残り39チームは1人または5人チーム、
- 3人チームが1つ、残り39チームは1人または5人チーム、
- 4人チームが1つ、残り39チームは1人または5人チーム、
- 2人チームが1つ、3人チームが1つ、残り38チームは1人または5人チーム、
- 2人チームが1つ、4人チームが1つ、残り38チームは1人または5人チーム、
- 3人チームが1つ、4人チームが1つ、残り38チームは1人または5人チーム、
- 2人チームが1つ、3人チームが1つ、4人チームが1つ、残り37チームは1人または5人チーム、
7通りの場合を1つずつ丁寧に考えると(ここは省略)、上の7つの場合のうち、チームの平均人数が3人であるようにできるのは
2人チームが1つ、4人チームが1つ、残り38チームは1人または5人チーム
の場合だけで、さらに、38チームのうち19チームが1人チーム、残り19チームが5人チームでなければいけないことが分かる。
取り残された2人チームと4人チームはどうなるのだろうか? 対戦相手チームは永久に現れないので、失格か。
だとすると、三次選考に進む人数は 19 * 5 = 95 人である。
したがって、最終的な答は、「100人または95人」となる。
[訂正] 少し間違ってました。95人だけが答だと思い直した。
最後のゲームについて考えてみる。最後のゲームは2人チーム対2人チームか、3人チーム対3人チームか、4人チーム対4人チームかのどれかである。その最後のゲームが終わったら、上の2つの答のうちのどちらかになっている必要がある。
もし最後のゲームが2人チーム対2人チームだとすると、試合後に3人チームが1つできてしまうので、上の2つの答のうちのどちらかにならない。
もし最後のゲームが4人チーム対4人チームだった場合も、同様に試合後に3人チームが1つできてしまい、上の2つの答のどちらにもならないのでダメだ。
なので、最後の試合は必ず3人チーム対3人チームであり、その結果2人チームと4人チームが1つずつできて終了する。
これらの2人チームや4人チームは、対戦相手を見つけられないので取り残される。(もし対戦相手チームがまだいるようだったら、「3人チーム対3人チームの試合が最後の試合だったという仮定に矛盾する。)
したがって、最後は95人が勝ち抜け、19人が敗退、2人チームが1つ孤立、4人チームが1つ孤立、となる。
どちらにせよ、意外と多く(120人中95人)が三次選考に進むことは変わらない。