2016年6月13日

算数ができないと景気が回る?

平均的なイギリス人の算数がいまいちであることは、比較的有名である。

私が算数を生業としているからといって高い基準を言いたいのではない。

空港行きのバスに乗った。
料金は往復6ポンド。
ぴったりのお金を持っていなかった。
イギリス国の1ポンド玉は、日本国の100円玉より3倍ぐらい(?)分厚いので、なるべく避けたい(これ自体改善してほしいのだが)。
5ポンドは紙幣なので軽い。
そこで、多分駄目だろうと思いつつ、11ポンド(10ポンド札 + 1ポンド玉)を運転手に出してみる。
5ポンド紙幣がお釣りで返ってくる、、、のは稀有である。

運転手は、怪訝な表情をして、まず、1ポンド玉を自分に返してきた。
次に、1ポンド玉を4枚出してきた。
これから海外出張だというのに財布が重い!

まとめ:11 - 6 = 5 はできない。
その運転手が特別なのではなくて、よくある。
でも、イギリスの算数教育について物申す気はない。
イギリスの教育には、過去のブログ [イギリスの小学校, イギリスの小学校(その2)]にも書いたように良い点がいくつもある。

「算数ができないから個人消費の経済循環が良い」

という新説(?)を主張してみる。
これは、すでに誰かが述べているかもしれないし、経済学的に誤りかもしれない。私は専門家ではないし、下調べもしてません、と先に言い訳をしておきます。

さて、日本を見ると、みんなが貯蓄してしまって消費に振り向けない。だから、市場にお金が回らず、景気回復のエンジンが入らないのだ、という議論をよく見る。
貯蓄に行きやすい理由として、将来への不安、そうでなくても貯蓄ということが好きな国民性、などがあるかもしれない。
ただ、国民のほとんどが基礎的な算数をできる、というのが貯蓄という行動の前提条件である、と考えてみた。

算数が盛んな日本でも、例えば、福利計算の仕組みを分かってる人はそんなに多くない。
しかし、どれくらい使うとどれくらい減って、これ位貯めていくとこれくらいの感じで貯まっていく、といった計算。あるいは感覚。
「稼ぎの40%が家賃になってしまうと家賃が高すぎるのでまずい」という時の40%という数字。
こういう数字は、具体的に電卓で計算する場合もあるだろう。数字をはじき出すことはしないが、どんぶり勘定で何となく頭で分かっている、という場合もあるだろう。どちらの場合にしても、2,3桁の足し算から割り算くらいまでがしっかり経験済だから分かるのだ、と言いたい。そうでない人は、1ヶ月に2万円貯めると1年で24万円になるということを、たとえ電卓を使ったとしても十分に理解できないかもしれない。「40%」なんて概念は、肌感覚として分からないのではないだろうか。
だから悪い、と言いたいのではない。むしろ逆で、そのお陰で景気が回りやすい? と言ってみたい。

おしなべて言えば日本人はこういったお金の勘定に長けている、と仮定する。すると、将来が分からないような状況で、消費に大きく振り向けることはしない人が多い、となる。老後もこれくらいお金がかかるし、と考えたりもして。あるいは、普段からしてこんなに使うとまずい、と何となく分かったりもして。日本人にありがちなリスク回避思考と相乗効果なのかもしれない。

一方、10や20までの足し算や割り算が怪しい国では、そういうことを考える人が圧倒的に少なそうだ。そういう人は、多分、自分の稼ぎに対してどれだけ使っていいのかが分からない。どれだけ使ったかも計算できない。電卓があっても、である。そういう雑誌やニュースが言っていることも理解をできない。結果として、収入に比して多い消費をしてくれるので、お金が市場に出てきて国民レベルで(家計収入の割に)個人消費が活発であり、景気も回りやすい。。。本当かな?