2023年5月28日

中国人ネットワーク

子どもの通う学校には中国人やインド人が多い。私の住む学区は広域バッファローの中でも良い学区の一つとして認識されているので、教育熱心な親はこの学区に家を買おうとする。そのようなアメリカ人もそれなりに多いが、例えばアジア人の親は、この基準で住む場所を選ぶことが多い。うちもそうだ。

このようにして、日本人は、うちの学区や、その他の学区が良い地域に偏在しているようだ。
ただ、そのようないい感じの地域に限ったとしても、バッファローにおける日本人は希少種だ。

韓国の人口(5000万人を少し超える程度)は日本の人口の40%位だが、バッファローにいる韓国人は、日本人よりも確実に多い。
私の大学にいる韓国人教員は20人程度らしく、それだけで韓国人会をやったりするそうだ。
日本人教員は多分 5人程度だ(裏はとってないが)。

中国の人口は日本の11倍強だが、バッファローにいる中国人は、日本の11倍よりは多いと思う。
私の大学にいる中国人教員は、5 × 11 = 55 人よりは確実に多い。なにせ、我が数学科だけでも終身雇用の教員29人中8人が中国である(すごい!)。
うちの子どもが通う中学校でもそうだ。日本人は2人(うちの長女と次女)。中国人は 2 x 11 = 22 人よりは確実に多い(全校生徒数は 800 人位)。

これの何が重要なのか。

情報交換ネットワークである。

彼ら(親のこと)とて、私らと同じ外国人だ。グリーンカードを取ったり、国籍をアメリカに変更したりしている人も多い(むしろ、このどちらかを済ませている人が大半だろう)が、元は異なる国から来た。
したがって、アメリカの小中高や大学進学の仕組みについては、私や妻が元来は知らないように、彼らも元来は知らないはずだ。
学校のことに限らない。子どもの誕生会(友だちを呼んで行うのが一般的である)はこうやって挙行するのだ、といったノウハウも元来は持っていないはずだ。
彼らの多くは、大学院生として渡米して来ていたり、母国で全部の学位を取った後に仕事で渡米してそのまま居着いていたりする。したがって、アメリカの大学や仕事の仕組みについてはたくさん知っているかもしれない。しかし、子育てのことは情報の種類が全く別である。

また、海外出身であるかどうかに関わらず、子どもの習い事はこれがよいとか、この先生がよいとか、子どもの誕生会をやるにはこの店を使うとよいとか、保育園ならここがよいとか、ローカルな情報もある。バッファローの外からやってきたアメリカ人も、こういう情報は欲しいだろう。

とくに中国人は、数も多く、こういう情報を交換する自然なネットワークがあって、非常に有効であるように見えるのである。

例えば、私の大学に2年前に赴任して来た教授がいる。彼は別の学科だし直接会ったことはないが、その奥さんとお子さんに、子どもの誕生会で会った。中国人の同級生の誕生会に、その子も私の娘も、他の10人くらいの子どもと共に招待されたのである。印象的だったのは、4年前に来た私よりも、広いネットワークを持っているように見受けたことである。私らがバッファローに来てからすぐにコロナになったので、私らの最初の2年間位は難しかったせいもあるけれども、その影響を差し引いても、彼らが中国人ネットワークに素早く溶け込み、そこから色々な情報を得てバッファローでの生活を早く軌道に乗せることができたのではないかと推測する。

ひるがえって、うちの場合、知り合いの日本人や中国人などに色々教えて頂き、とてもありがたい。 ところが、日本人は絶対数が少ない。また、中国人同士のコミュニケーションの密度には及ばないと感じる。 すなわち、日本人もお互い助け合い、助けて頂いて日頃ありがたいのだが、中国人は海外で生きる中国人同士お互い助け合いましょう、というつながりがより強いように個人的には感じる。これは、文化的な理由なのだろうか?
また、中国人の知り合いも色々我々に教えてくれて、とてもありがたい。ただ、彼ら同士が中国語で日頃やりとりしている会話の密度にはさすがに及ばないだろう。

中国人ネットワークには、日本人ネットワークと比べたときに、人数が多い以外の重要な特徴もある。

学歴が高いのである。例えば、私の子どもが通う「数学プログラム」がある。放課後に、大学で、数学を先取りして学習する。その生徒名簿には親の連絡先が書いてある。そこには、やはり中国人が非常に多いのだが、その親の名前には Dr. がついていることが多く(例えば、私なら Dr. Naoki Masuda と書いてある)、両親とも Dr. という人も多い。両方博士号を持っていて、夫がうちの大学の教員で妻が会社員で、妻の方が稼ぎがかなり多い、という事例も複数聞いた(博士号を持っている人がアメリカの会社で働いたら、普通そうなる)。話していても、例えば夫が主な働き手である場合に、博士号を持っているのが大半で、また、妻が博士号や修士号を持っている場合がとても多い。そもそも、アメリカで大学院生をしているときに出会って結婚したとか、中国で若い時からつきあっていて2人とも留学したとか、そういうパターンが多いようだ。

学歴が高いと、平均的には、より教育熱心だったり、教育熱心さを子どもの学歴や成功に結びつける方法を結局はより多く知っていたり、自分の外のコミュニティ(例えば、中国人関係でない人たち)に対してよりオープンである傾向が高いように思う。

子どもの近しい友だちは、中国人が一番に多い。ついで、アメリカ人やインド人や韓国人といったところか(順不同で)。 したがって、親として、中国人ネットワークに触れる機会が比較的多く、彼らから学ぶことがとても多い。